日本ロジテック協同組合の破産手続き 負債総額、71億円を超える可能性も
2016年3月16日 日経ビジネス掲載より
新電力大手の日本ロジテック協同組合(東京都中央区)が、3月11日付で事後処理を弁護士に一任し、自己破産申請の方向で検討を進めていることがわかった。帝国バンクと東京商工リサーチが大型倒産速報で報じている。

東京リサーチによると、弁護士は「破産を選択肢の一つとして調査を進めていく。調査終了次第、債権者に対して負債額等を伝える。3月31日まで電力共同購買事業を行う」と話しているという。負債総額は71億6,061万円(2015年3月期末時点)だが、その後に増加している可能性がある。

同組合は、2月24日に、4月の電力小売りの全面自由化以降、電力を販売できる「小売電気事業者」としての登録申請を取り下げ、電力小売事業から撤退することが明らかになった。以降、同組合に売電していた電力会社や自治体では未払いによる回収難の問題が表面化したほか、電力供給先の契約者は新たに契約の切り替えが必要となるなど混乱が広がっている。

また、同組合は、3月11日に経済産業省より、再生可能エネルギー特別措置法に基づき、期限までに納付金(電気の使用者から支払われた賦課金)を納付していないとして、名前を公表されている。同組合は、2015年5月にも再エネ賦課金の未納で、公表措置を受けている。

FITを追い風に事業を拡大

日本ロジテック協同組合(出資金9990万円)は、2007年11月に12社の組合員により設立された事業協同組合。設立当初は共同流通センターの運営などを目的としていたが、経済産業省より特定規模電気事業者(新電力、PPS)の認可を受けて2010年4月より電力小売事業に参入。同年7月より電力供給会社から電力を一括購入し仕入価格を下げたうえで組合員に廉価で電力を販売する電力共同購買事業を開始した。その他、ETC割引制度共同利用事業と外国人技能実習生の受け入れ事業を手掛ける。

東日本大震災以降、相次ぐ原発稼働停止を受けて国内の電力市場が急変。再生可能エネルギー特別措置法(2012年7月施行)に基づく再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の開始を追い風に、同組合の電力小売事業の需要が大幅に増加した。

帝国バンクによると、上場企業との業務提携のほか、子会社を通じて発電施設の建設を行うなど業容を拡大し、地方自治体や公共施設、ホテル・旅館など約703団体(2015年3月末時点)を組合員としている。また、東京商工リサーチによると、2012年3月期は売上高4億2,600万円にすぎなかったが、契約数の増加から2015年3月期は売上高約555億7,700万円と急伸し、電力小売事業が売上高の99%を占め、電気供給量(小売)は新電力の中で5番目のシェアを占めていた。

しかし、業容拡大の一方、自前の発電所を持たず電力会社や企業、自治体の余剰電力を購入し安価に再販売するビジネスモデルのため、利幅は薄かった。また、関係会社を通じて建設を予定していた発電施設への資金負担などが重荷となり、資金繰りが悪化。取引先への支払いにも支障を来たす事態に陥っていたほか、2015年5月には経済産業省に対する納付金の滞納が表面化。大きく信用を損なう事態が起きていた。その後も資金繰りが改善することなく、電力の仕入先への未払いがたびたび発生。こうしたなか、10月には新たな上場会社と業務提携を結ぶ一方で、翌11月には既存の提携先との関係を解消するなど、体制が混乱していた。